すみません。いきなり本筋から外れた話題となります。
とはいえ、今が旬の話題ですから、お伝えします。
おかげでこのサイトの公開自体前倒しです。
出願に必要な費用の内訳
特許出願、商標出願と、知的財産権を取得したい、でも費用の問題がある、、、とお考えの方は少なくないかと思います。そして、それはその通りです。
費用には、①我々国内特許事務所の手数料の他、②特許庁に支払う印紙代、そして外国出願の場合にはさらに③現地の特許事務所の手数料があります。そして、それぞれが少なくない額なので合計すると結構な費用となります。
国内特許出願の場合、ざっくりと、出願に30万円前後、審査請求時に20万円前後、審査対応に10~40万円(場合によっては以上)かかります。そして特許になると維持するための登録料、年金が発生します。海外ですと現地の特許事務所の料金やその相場、特許庁の費用も、国によってまちまちですが、1国当たりその倍程度は見ておいた方がよいかと思います。
ここではざっくりと費用の感触をお伝えしましたが、出願の手続の流れとそれに伴う費用発生のタイミングについては、今後の記事にてお伝えしますね。
費用を削減するための手段
お伝えした上記の費用を削減するには、いろいろな方法があります。もちろん、例えば出願書類を短くしたり、取得する権利の範囲を非常に狭めて、品質を犠牲にして費用を削ることもできますし、一発で登録になれば審査の費用も要りません。しかしながら、大切な出願ですから、品質を犠牲にするのはあまりお勧めできません。
そこで、いくつか中小企業、スタートアップ企業等が利用できる補助金・制度をご紹介します。
補助金
主に、出願費用が嵩む外国出願や外国での係争に利用できる補助金が有名です。各都道府県やJETROが提供しています。国内での助成については、自治体によってまちまちです。
各都道府県による外国出願助成金
各都道府県では、外国出願について助成する助成金制度が設けられています。実は予算の出所は同じで、細かな違いはありますが、いずれも似通った制度になっています。例えば、東京都の助成金は以下の通り。
助成金|東京都知的財産総合センター (tokyo-kosha.or.jp)
こちら、外国に限定されてはいますが、特許のみならず実用新案、意匠、商標でも利用可能です。さらには、侵害調査、特許調査などの出願以外についても助成金があります。
申し込み資格としては基本的には中小企業等です。そして、助成率ですが、特許出願の場合、400万円を上限として生じた費用の1/2。
上限については、実用新案、意匠、商標は、それぞれ60万円です。
どの期間の手続に対して助成金がでるのかは大変重要でして、年度によっても自治体によっても異なりますが、令和5年度の東京都の場合、令和5年4月1日~令和7年11月30日(2年8月の期間)にした外国出願に関する手続に助成金がでます。2年8月の期間があるということは、国際出願(PCT出願)をした場合、2年6月以内に各国に移行しますから、基本的には国際出願とその各国移行までカバーできることになります。べんり!!
申し込みは、今年度は5月と10月です。申し込み期間が短いため、準備しておくことが大事です。
留意点としては、次のJETROの助成金との併用はできません。予算の出どころが同じだそうです。それから、後述する特許庁の国際出願促進交付金も利用できません。
日本貿易振興機構(JETRO)による外国出願助成金
JETROも同様の助成金制度があります。こちらは、出願、審査請求、中間応答と手続毎に申請する必要があります。
外国出願費用の助成(中小企業等外国出願支援事業) | ジェトロのサービス – ジェトロ (jetro.go.jp)
外国出願「審査請求」費用の助成(中小企業等外国出願中間手続支援事業) | ジェトロのサービス – ジェトロ (jetro.go.jp)
外国出願「中間応答」費用の助成(中小企業等外国出願中間手続支援事業) | ジェトロのサービス – ジェトロ (jetro.go.jp)
補助率は東京都と同様に1/2。出願の場合の上限は、特許150万円で、実用新案、意匠、商標は、それぞれ60万円です。
助成される手続は、採択決定通知日から実績報告書締切日までの間にする必要があり、これは、実質数か月。かなり計画的に手続を行う必要があります。
応募受付期間は、以下の通りです。
第1回 令和5年5月8日 (月曜) ~ 5月19日 (金曜) を予定
第2回 令和5年7月3日 (月曜) ~ 7月14日 (金曜) を予定
第3回 令和5年9月4日 (月曜) ~ 9月15日 (金曜) を予定
こちらも、留意点としては、各都道府県の助成金との併用はできません。また、後述する特許庁の国際出願促進交付金も併用できません
その他自治体の助成金
その他、まちまちですが、自治体が助成金制度を設けている場合があります。各都道府県やJETROの助成金は外国出願でしたが、国内出願について助成金制度を設けているところもありますので是非調べてみてください。
例えばですが、千代田区では、以下のような国内出願向けの助成金制度もありました。
千代田区ホームページ – 産業財産権取得支援事業 (chiyoda.lg.jp)
各都道府県やJETROの助成金と併用できる場合もあり、組織の担当者の方に問い合わせるとよいと思います(千代田区はできるそうです)。
特許庁の減免措置
特許庁は、中小企業、スタートアップ企業等に対して、審査請求料や特許料の減免制度を提供しています。
特許料等の減免制度 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
2019年4月1日以降に審査請求をした案件の減免制度(新減免制度)について | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
例えば、中小企業であれば、特許出願の審査請求料、特許料(1~10年分)が1/2、スタートアップ企業、小規模企業、個人であれば、1/3、国であれば、タダ(!!)になります。
使わない手はないですね。
なお、国際出願(PCT出願)にも手数料の減免制度があります。
国際出願に係る手数料の軽減措置の申請手続 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
減免の割合は、国内特許出願と概ね同様です。国際出願時に支払う手数料については、いくつか種類があって減免が適用されるのは、送付手数料、調査手数料の2つ。
そして、キャッシュバックのような形で手数料が戻ってくる国際出願促進交付金というものもあります。こちらは申請が必要ですが、利用するとかなりの手数料が戻ってきます。
国際出願促進交付金の交付申請手続 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
但し、このうち最も減免効果の高い国際出願促進交付金を利用すると、各都道府県の助成金やJETROの助成金が利用できなくなるので要注意です。こちらの国際出願についての減免制度は、令和6年1月1日から変更がありますが、助成金との関係はどのようになるのか、気になるところです。
国際出願手数料及び取扱手数料に係る新たな支援措置について | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
海外特許庁の減免措置
多くはないですが、海外の特許庁でもいくつか減免制度があります。例えば、米国のSmall Entity、Micro Entityなどが有名です。ここで詳細に説明すると長くなるので省略しますが、対象の国に減免制度がないか、かかりつけの弁理士の先生に聞いてみてだください。
時間が許せば、いつかまとめてご紹介したいとは思っております。
どうすれば制度を有効に活用できるか。
やはり、使える制度は有効に利用すべきです。しかしながら、制度を知らなかったり、申請時期を過ぎてしまっていると、制度を活用することができません。では、どうすれば制度をフル活用できるか。私は、以下のポイントが大事だと考えています。
2~4月の間に次年度行う出願手続と利用する補助金を検討しておく
この点、大変重要です。どの出願に対してどの補助金を利用するか、年度が始まる前に十分に検討してください。
基本的には補助金は、自治体などの行政機関経由で提供されています。そして、大抵、年度末の議会で予算が承認されて、その予算を使って補助金制度を提供するわけです。そうすると、補助金の申請時期は、5月以降となることが多いといえます。申請期間が短いため、事前に準備してないと間に合いません。気付くと申請期限が過ぎていることもあり得ます。
もちろん、いつ出願するか、簡単には判断できないケースも多々あります。しかしながら、例えば、国内出願を行っている場合には、外国出願はそれから1年以内に行うことは確実です。このような場合には、春先に外国出願を行うか、補助金を利用するか一旦考えることが可能です。
担当の弁理士に減免・補助金を利用したい旨を伝える
こちらも大事かと思います。例えば、飛び込みで特許事務所を訪れた場合、特許事務所の弁理士は、クライアントが中小企業であるのかわからない場合もあります。また、出願内容に集中しすぎて補助金に思いが至らない先生もいらっしゃることでしょう。補助金は、基本的には出願人が申請するもので特許事務所や弁理士が代理するものではありませんが、申請時等において特殊な書類を要求されることもあり、弁理士の協力が必要な場合が多いのが実情です。
確認的にでも担当の弁理士に伝えることで、補助金、減免制度を有効に活用できる可能性が高まります。
補助金を把握しておく
こちらも大事ですね。補助金については例えば、以下のサイトで検索できます。
ミラサポplus 補助金・助成金 中小企業支援サイト|経済産業省 中小企業庁 (mirasapo-plus.go.jp)
制度を探す(制度ナビ)|経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus (mirasapo-plus.go.jp)
例えば、制度ナビで地域と知的財産にチェックをして
するとこのような結果。
助成金の支援制度を見つけることができました。余談ですが、制度ナビは、支援全般を検索することができるので、助成金以外の支援制度も気に入ったものがあれば利用ください。
まとめ
助成金制度は出願費用を抑えるのに非常に有用ではありますが、有効に利用するには計画的に春先に、どの出願についてどの助成金を利用すべきか検討しておく必要があります。また、前もって担当の弁理士に制度を利用したい旨伝えることも、ご自身で制度を検索しておくことも大事です。有効に活用して、知的財産を適切に守りましょう。